嵐は去った。
本日、我がアグレゴ民国樹立というこの良き日に、私が立ち会えたのは幸運とも言えるだろう。
厳粛なる式典会場では、今まさに初代委員会陣が壇上に赴き、人民達はただそれを静かに見守るのみだ。
彼等の足取りは決して軽くは無い。
これまでの歴史が、彼等の両足に重くのしかかるのだ。
しかし、これからの未来を歩むにはそれくらい慎重な方が丁度良いのかもしれない。
記念すべき日となる今日、私は筆を取り、この国成立までの歩みを記そうと思う。
世界的に見るとそれは、この小さな国が成り立つまでのほんの小さな出来事かもしれない。
しかし私にはこれを記す義務がある。
散っていった者達の魂が、これからこの国を背負っていく者達の気持ちが、私にそうさせるのだ。
今回この記事の発行に当たり尽力頂いたハミル、並びにグラニー両氏に多大なる感謝を。
また出資頂いたリュアン氏にも感謝の意を述べさせて頂きたい。
この記録を、これからの恒久なる平和へと捧げる。
―アールン=K=クリスト
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筆者:アールン=K=クリスト (記者、ノンフィクション作家)
元々は他国のジャーナリストとして内戦中のアグレゴ共和国へ入国した経歴を持つ。終戦後もそのまま現地に留まり、アグレゴ民国籍を取得。その後アグレゴ通信社に記者として在籍するに至る。
学生時代は歴史学を専攻しており、世界のあらゆる戦記についても造詣が深い。
現在はアグレゴ民国の復興現場の取材をしつつ、自身が取材した内容を元に内戦状態だった共和国時代からアグレゴ民国建国までの記録を執筆している。
代表作:「ロイヤルキングの黄昏」「戦争とフィグ」等
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