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再燃したLEGO熱をぶつけるべくでっち上げたBlogです。
内戦状態にあった小国の戦争が終わり、新たな国が樹立されたという時代背景を元に、雑誌記事と言う形式で物語を紡いでいく感じでやっております。
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このBlogの内容はフィクションです。実在する人物、企業、団体、出来事とは一切関係ありません。

2015年4月9日木曜日

【非定期連載】アグレゴ戦記 第2回「雨の街」


 降り続く雨は確実に体力を奪っていく。この街は抱える人口にもよらず、その静けさはまるでこの雨にやられてしまい、活力を失ったかの様だ。

雨の振るベイガン区ビニル市街

 ここはアグレゴ共和国の国境沿いの町、ベイガン区ビニル市。人口約12万人を抱えるベイガン区の区都であり、アグレゴ極北部の中核都市だ。密入国手引きの業者によって、ようやく今入国を果たす事が出来たのでこれを記している。この国は現在、政府軍と反政府軍による激しい内戦へと突入している。正規のルートにて、もっと安全且つ確実(ここに至るまでもいくつもの苦労があったが、ここでは省くとする)に入国したいというのが本意だったが、現在各国にて渡航規制がかかり、この国自らも入国規制をかけているため、通常の手段ではこの国には入ることは困難になっている。私はそんなこの国の現状を取材すべく、今日ここにやってきたと言うわけだ。

 事の始まりは約1年前、衛星通信でアグレゴ共和国内の反政府組織とのコンタクトに成功した事による。以前から気にはなっていたが、その現状が全く報じられず、状況が一切不明だったアグレゴ共和国内に対して、私は過去数十回に渡って衛星通信により電子メールを送信していた。結果は予想通りではあったが、返事が来ることは無いまま数ヶ月が経った。私は執筆作業等、他の仕事が残っている事もある為半ば諦めかけ、もうメールの送信をやめようかとしていた。

 しかしそこに一通のメールが届いた。その内容を見ると、返信者はアグレゴ共和国の反政府組織の構成員であるという。さらに内容を確認すると、まさに私がアグレゴ共和国内へ対して送り続けていたメールに対する返事だった。私はついにメールが届いたのかと半ば狂喜した。
 しかし、実はそのメールは、私がうっかり誤ってアグレゴ共和国以外の国にあるサーバに送付した物に対しての返信だったのだ。一体なぜそれが反政府組織へ届いたのかと首を捻った。実は反政府組織には、国外で活動をしている者も存在し、今回誤送メールを受信したその相手こそがなんと、反政府組織の協力者という出来すぎたような偶然だったのだ。
 私は運命とも言えるこの状況に興奮した。経過はともかく結果オーライだ。

 私はまたすぐに返信をし、そのままやり取りを続けた。当初は警戒をされていたが、こちらの活動や身分を明かすなど、自分が協力者である事を伝え続けることで何とか信頼を得た。そしてメールの内容からいくらかの内情を得る事は出来たが、聞きかじったような知識にしかならないし、何よりもリアリティが無い。やはりここはジャーナリストらしく、より明確な真実を得るには直接現地へ赴くしかないと考え、手引きを頼んだことが今回のきっかけとなった。

 ところで私が入国後まず驚いたのは密入国者の数だ。これまでほとんど報道もされず、状況の分からない国であったにも関わらず、私と共に密入国をした者が大量に存在した。後で聞かされた話では、その殆どが反政府組織の協力者であり、皆それを伏せているが、この街を歩いている者の2割ほどは密入国者との事だった。そのような状況にも関わらず国外にて報道がされなかったのは、諜報機関による工作もあったが、この国は入国は当然に厳しいが、出国は更に困難を極めるとの事だった。私が国外に居る協力者と繋がりを持てたのはまさに奇跡ともいえる。そして私は無事に自分の国に帰ることが出来るのだろうか?

 さて、まずは反政府組織のメンバーと接触する手はずになっていた。合流するのに指定された場所は、市内中心街から車で30分ほど走った郊外だ。私はそこで、以降共に行動する事となる一人の男と出会うことになる。




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筆者:アールン=K=クリスト (記者、ノンフィクション作家)
 元々は他国のジャーナリストとして内戦中のアグレゴ共和国へ入国した経歴を持つ。終戦後もそのまま現地に留まり、アグレゴ民国籍を取得。その後アグレゴ通信社に記者として在籍するに至る。
 学生時代は歴史学を専攻しており、世界のあらゆる戦記についても造詣が深い。
 現在はアグレゴ民国の復興現場の取材をしつつ、自身が取材した内容を元に内戦状態だった共和国時代からアグレゴ民国建国までの記録を執筆している。
代表作:「ロイヤルキングの黄昏」「戦争とフィグ」等
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